黒猫


今日の海は波が荒く、まるで日本海のそれのようであった。

私にとって海とは、出会いと別れの場所である。

そこにいるだけで、
いろんなことを思い出す。


「あ、」

場所と記憶が一致するや否や、
場所は記号でしかなくなる。


まるで地縛霊のようにその映像は私にとりついた。

これからわたしは、
あなたになにをしてしまうんだろう。


シンクロする夢のような シンクロする現実


. . . . . . . .


海辺で花火をするのは今年で二回目。
今回は豪華な花火セットを買った。


打ち上げ花火が沢山詰まっていた、
それでも両隣の若者グループに規模が負けていた…。


暗がりの中、
ロケット花火を並べて並べて、
20本程の点で描く直線、
導火線を一方向に。


ジリジリジリジリ

ヒュッ!



パァン。


ちっちゃな打ち上げ花火は、
私たちと同じくらいの背丈にみえた。

まだ子供。

. . . . . . . .

突然黒猫が現れて私たちの前を横切った。

「見に来たの?」

それは偶然とは思えなかった。
神の意思、と言ったら大袈裟だろうか。

雲の狭間の紫色光。波の轟き。不気味な雰囲気が盛り上がる中、
使者がやってきた。
悪魔の使者か天使の使者か、

<猫は引き返してまたやってきた。>

私はその猫に人間臭いものを感じた。
人がいるから寄ってきたという言い方は適当でない。
港町で育った彼は人間そのものだろう。



不気味なくらい予想通り、
いつの間にかいなくなっていた。


. . . . . . . .



ふたり、寝転んで上を見ている。

西湘バイパスに等間隔に植えられた、
オレンジ色の灯。
ランプのように、自然な一空間、を照らす。

一つの宇宙がここに。


太陽系の惑星が増えたらしい。そんな話。
そっか。
定義じゃなくて、

「ぼくは星の神秘を知りたいんだ。」







雲がひいた。
「あ、星が、」



   星が、  今日は控えめに輝いていた。
しっとりとした感触が全身に張り付いた。